IT資産管理を始める前に決めておく5つのこと|運用が続く土台の作り方

意気込んで資産台帳を作ったものの、半年も経つと誰も更新しなくなり、いつの間にか現物と合わない台帳だけが残っている――。
情シスの方からよくお伺いする話です。では、運用が続く組織と続かない組織の違いはどこにあるのでしょうか?

私は、その分かれ目は「台帳を作る前に何を決めておくか」にあると考えています。そこで今回は、その中で見えてきた「IT資産管理を始める前に決めておきたい5つのこと」を整理してご紹介します。なお、資産台帳に登録する項目については別記事で詳しく解説していますので、本記事では運用の枠組みに焦点を当てます。

なぜ「始める前」に決めることが大切なのか

なぜ、運用を始める前に時間をかけてルールを決める必要があるのでしょうか。それは、運用を始めてから変更する方が、はるかに大きな手間がかかるからです。例えば、資産番号のルールを後から変更するとします。すでに300台分の番号を付与していれば、資産シールの貼り替え、台帳データの一括修正、関連資料の更新など、作業は芋づる式に増えていきます。最初に5分考えて決めておけば済んだことが、半年後には数日がかりの作業になることも珍しくありません。これは家を建ててから基礎をやり直すようなもので、最初の設計のわずかなズレが、運用全体に少しずつ影響してきます。

もちろん、最初から完璧な設計を目指す必要はありません。むしろ完璧主義は、着手を遅らせる原因になりがちです。ここで決めておきたいのは細かなルールではなく、後から変更すると影響が大きい「骨格」の部分です。今回は、その骨格となる5つのポイントをご紹介します。

決めること① 管理する範囲(どこまでを資産とするか)

最初に決めたいのは、「どこまでを管理対象にするか」です。この段階でつまずく組織は少なくありません。意気込みが強いほど、「PCもサーバーもライセンスもSaaSも、ついでにマウスやLANケーブルまで全部管理しよう」と考えがちです。その気持ちはよく分かります。しかし、管理対象を広げすぎると、登録だけで力尽きてしまい、肝心の台帳更新まで手が回らなくなります。最初からすべてを管理しようとして運用が止まってしまうことこそ、最も避けたい失敗です。

おすすめなのは、「管理しなければ困る資産」から始めることです。具体的には、紛失や故障が大きなリスクにつながるPCやサーバーなどのデバイスと、コストが膨らみやすいソフトウェアライセンスやSaaSです。この2つから始めれば、IT資産管理の大きな目的であるセキュリティ対策とコスト管理を、比較的少ない工数で実現できます。マウスやLANケーブルのような少額の消耗品は、運用が軌道に乗ってから追加しても遅くありません。

管理対象を絞ることは手抜きではなく、運用を継続するための工夫になります。まずは、自社で「なくなると本当に困る資産」を書き出してみるのがよいでしょう。

決めること② 採番・命名のルール(呼び方を先に統一する)

次に決めておきたいのは、資産の「呼び方」です。資産番号の付け方だけでなく、種別や管理部門などの名称も含めて、最初にルールを統一しておくことが重要です。例えば、従業員80名ほどの製造業で、総務部がIT資産管理を兼務しているケースを考えてみます。担当者ごとに資産番号を付けた結果、「PC-001」「ノートPC1」「機種名のみ」といったように、ルールが統一されていない状態になってしまいました。後から「PCだけを抽出して台数を集計したい」と思っても検索条件を統一できず、結局Excelを目視で確認することになります。このようなケースは珍しくありません。

採番ルールは、できるだけシンプルにすることをおすすめします。例えば、PCなら「PC-001」、サーバーなら「SV-001」のように、「種別+連番」程度で十分です。一方で、設置場所や購入年度など多くの意味を番号に持たせると、組織変更やレイアウト変更のたびにルールが崩れやすくなります。また、資産番号だけでなく、項目の表記も統一しておく必要があります。例えば管理者名が「山田太郎」「山田 太郎」「Yamada Taro」と混在していると、検索やフィルターで漏れが発生します。

こうした表記ゆれを防ぐには、自由入力ではなくプルダウン選択を利用する方法が効果的です。Assetiveでも、資産種別・ステータス・管理部門などはマスタ管理し、プルダウンから選択する仕組みを採用しています。これは、「人は必ず表記ゆれを起こす」という前提で設計しているためです。

なお、資産台帳に登録すべき項目については別記事で詳しく解説しています。本記事では、「呼び方のルールを最初に決めること」が重要だという点だけ押さえていただければ十分です。

決めること③ 誰が責任を持つか(管理者と役割分担)

3つ目は、「誰が台帳を維持するのか」を明確にすることです。これが曖昧なままだと、台帳はあっという間に最新ではなくなってしまいます。「みんなで更新しましょう」という運用は、一見すると理想的に思えます。しかし現実には、「みんなの仕事」は「誰の仕事でもない」状態になりがちです。そのため、まずは台帳全体の管理責任者を1人決めることをおすすめします。そのうえで、各部門に「自部門の資産異動を申請する担当者」を置くという二層構成にすると、更新フローが回りやすくなります。

あわせて考えておきたいのが権限の分け方です。全員が自由に編集できる状態では、意図しない変更が起きても気付きにくく、履歴も追えません。一方で、1人しか編集できない運用では、その担当者が不在になっただけで更新が止まってしまいます。そのため、「全体を管理する人」「自部門を編集する人」「閲覧のみ行う人」の3段階程度に役割を分けると、運用と管理のバランスが取りやすくなります。

この考え方は、多くのIT資産管理ツールでも採用されています。Assetiveでも、admin(管理者)・editor(編集者)・viewer(閲覧者)の3つのロールを用意し、それぞれの役割に応じて権限を設定できるようにしています。

決めること④ いつ更新するか(更新のタイミングとルール)

4つ目は、「いつ台帳を更新するのか」をあらかじめ決めておくことです。ここが曖昧なままだと、棚卸しの時期にまとめて更新する運用になり、担当者の負担が大きくなります。更新のタイミングは、大きく分けると次の3つがあります。

  • イベント駆動:入社・退職、部署異動、PC購入、ライセンス契約、機器廃棄など、資産の状態が変わったタイミングで更新する

  • 定期確認:四半期や半期など、一定期間ごとに台帳全体を見直す

  • 棚卸し:年に1~2回、現物と台帳を照合して差異を確認する

この中で最も重要なのは、イベント駆動による更新です。PCを購入したとき、社員が退職したとき、ライセンスを追加したときなど、その都度台帳を更新できていれば、常に最新に近い状態を維持できます。その結果、棚卸しは「答え合わせ」のような確認作業で済みます。

一方で、日々の更新を後回しにすると、棚卸しのタイミングで半年分の変更をまとめて反映しなければならず、多くの工数が発生します。棚卸しや日常メンテナンスの具体的な進め方については別記事で詳しく解説します。本記事では、「更新するタイミングを最初に決めておくこと」が重要だという点を押さえていただければ十分です。

決めること⑤ どこに置くか(台帳の置き場所と共有方法)

最後に決めておきたいのが、資産台帳を「どこに置き、どう共有するか」です。ここを最初に決めないままにしておくと、台帳が各自のPCや個人フォルダに散らばってしまい、「どれが最新なのか分からない」という状態に陥りがちです。せっかく作った台帳が、いつの間にか誰のものでもなくなってしまうのは避けたいところです。

原則は、個人で抱え込まずに、関係者がアクセスできる場所へ一元化しておくことです。置き場所そのものに加えて、どのように共有するかというルールも、運用を始める前にセットで決めておくことをおすすめします。私が現場の話を伺う中でも、ここを曖昧にしたまま走り出して、後から収拾がつかなくなるケースが少なくありませんでした。

共有のしかたとして、あらかじめ決めておきたいのは次の4点です。

  • アクセス範囲:誰が台帳を閲覧できるのかを決めておきます。全社に開くのか、情報システム部門や関係者に限定するのかを最初に整理しておくと迷いません。

  • 編集権限:誰が更新してよいのかを決めておきます。全員が自由に編集できる状態にしておくと、いつの間にか内容が書き換わったり、必要な情報が消えてしまったりしても気付けません。

  • 同時更新への備え:複数人が同じタイミングで台帳を触ったときに、どう扱うかを決めておきます。版が混在したり、後から開いた人の保存で前の変更が上書きされたりする事故を、どう防ぐかという観点です。

  • バックアップ・履歴:誰がいつ何を変えたのかを後から追えるようにしておきます。万一データが壊れたり消えたりしたときに、元に戻せる備えがあると安心です。

「どこに置くか」という置き場所と、「どう共有するか」という共有ルール。この2つをセットで最初に決めておくことで、台帳が後から散らばらずに済み、運用を続けやすい土台になります。

5つを決めたら、まずは小さく始めてみる

管理する範囲、採番・命名のルール、責任者、更新タイミング、台帳の置き場所。この5つの骨格が決まったら、あとは小さな範囲で実際に運用してみることをおすすめします。最初からすべてのIT資産を登録しようとする必要はありません。まずは1つの部署だけ、あるいはPCだけといったように、管理対象を絞って台帳を運用してみましょう。資産を登録し、別の担当者に確認してもらい、実際に1件更新してみる。小さな範囲であれば、半日程度で一通りの流れを試すこともできるでしょう。実際に運用してみると、「この項目は不要だった」「このルールでは現場で運用しづらい」といった改善点が必ず見つかります。その気付きを反映してから対象を広げることで、大きな手戻りを防ぐことができます。

もちろん、最初に決めた5つのルールも、運用しながら見直して構いません。ただし、土台となる骨格だけは最初に決めておくことが重要です。小さく始めて改善を重ねる。この進め方が、IT資産管理を無理なく定着させる近道だと考えています。具体的な導入手順については別記事で詳しく解説する予定ですが、まずは「小さく始める」という考え方を意識していただければ十分です。

まとめ

IT資産管理を始める前に決めておきたいポイントを、5つご紹介しました。

  • 管理する範囲:すべてを管理しようとせず、デバイスやライセンス・SaaSなど重要な資産から始める

  • 採番・命名のルール:資産番号や名称を統一し、表記ゆれを防ぐ

  • 誰が責任を持つか:管理責任者と部門担当者を明確にし、役割を分担する

  • いつ更新するか:イベント発生時の更新を基本とし、定期確認と棚卸しで補完する

  • どこに置くか:組織規模や運用方法に応じて、Excelと専用ツールを使い分ける

どれも特別な作業ではありません。しかし、この5つを最初に決めておくだけで、半年後、1年後の資産台帳の状態は大きく変わります。反対に、これらを曖昧なまま運用を始めると、「誰も更新しない台帳」になってしまう可能性が高くなります。

まずは完璧を目指すのではなく、小さな範囲から運用を始め、実際に使いながら改善を重ねていきましょう。それが、IT資産管理を長く定着させるための近道です。

IT資産管理そのものの定義や目的について詳しく知りたい方は、「IT資産管理とは? 定義・目的・固定資産管理との違いを解説」もあわせてご覧ください。また、Excelと専用ツールのどちらを選ぶべきか迷っている方は、「IT資産管理ツールはExcel・専用ツールどちらにすべき?その判断基準とは」も参考になるはずです。

また、ここで決めた枠組みのなかで実際に台帳へ持たせる項目については、別記事「IT資産台帳に最低限必要な項目は?資産管理画面のフィールド設計を公開」で具体的に解説していますので、土台づくりの次のステップとしてあわせてご覧ください。

今回ご紹介した5つのポイントのうち、「責任者の明確化」「権限管理」「更新履歴の記録」「資産台帳の共有」といった部分は、専用ツールを利用することで仕組みとして実現できます。

ルールを人の努力だけで維持するのではなく、仕組みで継続できる運用を目指したい方は、IT資産管理ツール「Assetive」もぜひご覧ください。

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